(2)食品タンパク質由来の生理機能ペプチドの探索
1)血圧降下作用ペプチドの探索と構造解析
タンパク質を酵素で分解するとペプチドという物質が生成しますが、分解する前のものに比べ分解後は血圧降下作用を示すものがあります。つまりタンパク質の酵素分解によって血圧降下ペプチドが生じるのです。
ヒトの血液中には血圧上昇作用を示すアンジオテンシンIIという物質が存在し、これはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって合成されます。食品中のある種のペプチドは、このACEの働きを阻害し、それによってアンジオテンシンIIが合成されにくくなり、結果的に血圧を低下させる効果を発揮します。私たちの研究室ではこれまでに大豆ホエイタンパク質、アピオスタンパク質、そして昆虫(ハチノコ、カイコなど)タンパク質の有効利用を目的として、これらの酵素分解物より血圧降下ペプチド(ACE阻害ペプチド)の探索および構造決定、そしてラットを使った動物実験による血圧降下作用の確認などをおこなっています。
2)抗酸化作用ペプチドの探索と構造解析
食品素材の酵素分解で生じるペプチドの中には上記のような血圧降下作用以外の生理機能を示すペプチドが存在します。それは抗酸化作用を持つペプチドです。これは、万病の元である活性酸素を消去し、病気を防ぐ作用が期待されているものです。
私達はローヤルゼリーや大豆ホエイタンパク質、卵殻膜タンパク質の酵素分解物、納豆(納豆は納豆菌とダイズから作られますが、納豆菌はダイズに含まれるタンパク質を納豆菌自らがつくり出すタンパク質分解酵素により分解します)中に含まれる抗酸化作用ペプチドの探索、構造決定をおこない、更には酸化ストレスを与えた培養細胞(U-937細胞)に対する抗酸化作用を調べています。