4)海産無脊椎動(グミ)物由来溶血性レクチンに関する研究
九州の筑前海では、グミ(Cucumaria echinata)というナマコに似た生物が大量発生して底引網漁業に被害を与えています。私達はグミより生理活性タンパク質であるレクチン(糖結合タンパク質)の精製を試み、数種のガラクトース特異的レクチンを分離精製しました。これらのレクチンの中で、CEL-IIIというレクチンは赤血球凝集活性以外に、溶血活性を示すという既知のレクチンにはない性質を示すレクチンであることが明らかになりました。
CEL-IIIは赤血球膜上の糖鎖に結合し、膜上で会合してオリゴマー化し結果的に小孔を形成して赤血球を溶かします。変異体解析と立体構造解析より、CEL-IIIのN末端2/3の領域が糖結合ドメイン、残りC末端1/3の領域が会合体形成ドメインとして機能する事が推定されており、現在、CEL-IIIの欠損変異体や部位特異的変異体を作製して、その溶血メカニズムについて解析しています。また、CEL-IIIには溶血活性以外に、白血病株化細胞に対する細胞毒性や、マラリア原虫に対する増殖抑制効果があり、その利用法の開発や、高機能化を目指した研究を行っています。
この研究は金沢大学の吉田栄人先生および、長崎大の畠山智充先生との共同研究で行なっています。